母の人生のめぐり合わせ/野島せりか
父との離婚から、
三度目の春が過ぎて
夏が訪れる頃それは始まった
母は男とお酒を飲んだ
ずいぶん前からの知り合い?
まったくちがう世界の男
またしても背の低い男
でも 仕事にはやり手の男
本もたくさん読んだのね
父とはちがって頭の良い男
母は気取っていた
まだ子供だった私は
泣きそうになる気持ちを押し殺して背を向けた
あまりの皮肉に父を恋しがった
かわいそうな母
手を焼かせてしまったね
一晩だって家をあけられず
仕事もして
食事もつくってやらなければならなかった
素直になれるのは日記の中だけ
夜中に1人で泣いた時だけ
愛の悩み?それとも別の悩
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