水葬/黒川排除 (oldsoup)
 
ぼくは朝密会する 紙ナプキンに包まれたナイフの鋭さと
百枚の引き戸も百代の先祖もけたたましい音を立てて開く朝に

戸を静かに閉めることをしめやかにとは表現しない
だが軒先のタイル工事はしめやかに営まれた 望まれた塗香があった
こんなさめざめとした空気の中でぼくが施しを受けたってそれが何になるのだろう
そのように問うたぼくを泉は優しく引き入れはした

やさしいか いくら待っても降り止まぬ雨のように
水面と空気を分つ皮膚 が呼吸する度震えるのだ ぼくの手のひらがかたどられる
仰向けのまま初めて開かれた目に透明な爪はしめやかに伸びていた

タイル張りの新しい屋外で事細かにうしろめ
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