荷物違い/服部 剛
緑の山の頂に
ぽっくりあらわる かんのんさま
目を閉じて 静かに口を 結んでる
「ゆるしておやりなさい
裸を晒(さら)す あなた自身も 人々も
何度でも 非力な腕で
力を合わせてごらんなさい」
紅茶を一口すすった後に
愛読書を詰め込んだリュックサックをひらいたら
仕事の書類の束が出てきた
あまりの馬鹿さに思わず
「ごん」
額をテーブルに落とす
いらいら虫で視力を失い
違う荷物を持ってきて
道を引き返すのは たいへんだ
*尾崎豊「Scrambling Rock'n'Roll」より引用
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