表題の無い絵本/りぃ
泣きながら読んだ絵本を覚えている
誰かが何かを失くす夢
とてもとても大切なものだったり人だったり
走って走って!あの海岸線の向こうまで
世界中飛び回って探したとしても
その大切なものはもう無くて
この世界の何処にもなくて
けれど想い出は鮮明に焼きついて
今でも目を閉じるから
記憶の中で目が合って
慌てて手を伸ばしたりするんだ
何処にもいないことも
もう会えないことも
大したことじゃない
生きていれば何度も何度も
そんな場面に遭遇するけど
心はそのたびに震えて
弱い心を持った強い大人になってゆく
悲しみを覆い隠すように虚勢を張ったら
もうあの絵本のタイトルも思い出せなくなっていた――
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