時間の迷子たち/後期
 
を指でなぞると、亡くなった祖母の笑顔がふっと蘇る。
彼女は息をのんで、ひそかに「ありがとう」と囁く。
迷子の時間が、思い出と現実を柔らかく結びつけたのだ。

そして夜。
街全体の迷子の時間が重なり合い、
昨日と今日、過去と未来、夢と現実の境界がふわりと溶ける。

広場の少女、画家、若い男、時計屋の娘――
それぞれの拾った時間が偶然に交差した瞬間、街全体が光で震え、
石畳は微かに呼吸し、街灯は波打ち、窓ガラスは星のように瞬く。
猫は屋根から跳び、雨粒は空に舞い上がり、
街はひそやかな魔法の祝祭に包まれた。

私は今日も網を手に歩く。
角を曲がれば、まだ迷子の時間が次々と現れ、
街全体が、知らず知らずに変化している。
人々の小さな心の揺れ、忘れかけていた記憶、未来への微かな勇気――
すべてが時間の迷子と交わり、静かに、しかし確かに輝く。

時間は迷子でも、街は永遠に戻らない。
けれど、迷子の時間に触れた人々の心は、
魔法の夜のあとも、少しだけ温かく揺れ続けるのだ。


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