夏の肖像/
 
売ろうと思っている。

「あれも、私が描いた絵です」
髪も眉も足も爪も背中もあるけど、
描けば描くほど、
誰を描いたのか分からなくなる、
目を合わせると、
木下さんは今どこかとても遠い所で、

今ここに見えている人なんて、
本当は木下さんじゃ、ないんじゃ、ないかって、
野良猫がとぼとぼと昼寝の場所を探しに行くように、
帰って来ない人を見送っている気がした。

「ね、愛された人って、何を見ているんですか?」
「夢ですよ。人と人が、会って別れるだけのドラマ」

ゆっくりとぎこちない溜め息をつくのが聞こえた。

「下の名前は忘れました、呼ばれないので、」
カウンタ
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