小説の習作 原稿用紙三頁 #24/田中教平
 
 ユウスケは複雑であった。ユウスケは現在の自宅を気に入っていたが、そもそもユウスケの父方の、さすらいの民といった精神性を受け継いでおり、本当に家賃の支払いに困ったら、もっと安いアパートでも引っ越しても良い、いや、引っ越す事は可能であるからと高を括っていた。
 父方がさすらいの民の系譜であるならば、母は単純な引っ越し好きであった。東日本大震災が起こったとき、住んでいたマンションが揺れた。母はこんな東北から離れている所でこれだけ揺れるんじゃ、と理由をつけて、家族で山の中の暮らしに入った。
 しかし、山の中の生活に慣れた途端、市の中心に住みたい、と言いだし、ユウスケはそれに反対したから、その山の中の
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