食パン/はるな
ゼを置いておく。家族みたいにして。
でも、そういうのは、(三つ揃えの食器とか、むすめが撮った夫とわたしの写真とか、日向に飾っておいて黄ばんだ「ままがんばって」のメモの切れ端とかは)、わたしの心臓をすこし止める。(ひゅっ)と、存在しない落とし穴に落ちて、そしてまた戻ってくるまでのほんの一瞬。
球根はよろこびそのものだ。乾いて耐えている姿も良いし、きちんと花を咲かせることも素晴らしい。でも今年はひとつも植えなかった。置いておくだけで花が咲くサフランの球根も、ベランダの物置に閉じ込めたままだ。薄暗い気持ちになる。でももう遅いのだから、来年まで耐えさせるしかない。ますます残忍な気持ちになる。
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