春一番になった鬼/板谷みきょう
 

「……寝れねぇか。外の風が、うるせぇか。
『ごおごおっ』って、屏風山が唸ってるもんなぁ。
でもな、怖がるこたぁねぇ。あれは吉だ。吉が、この村さ、帰ってきた音だ。
ばっちゃが、この村で一番、悪いことをした時の話をしてやる。
……いいか、これは、ばっちゃが澄乃だった時の話だ」

第一章 額の印

むかし、この村に吉というわらしがおった。
吉が走れば村が笑い、吉が泳げば川が光った。
ところが、ある冬のことだ。吉が熱を出して寝込んだ。
数日して熱が引いた吉の額を見て、村じゅうが凍りついた。
こめかみの少し上、皮膚を突き破って、
どす黒い角が二本、生えてきたんだ。

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