『越境の衝動』 第二章/反復の丘/板谷みきょう
丘は、いつ行っても同じ形をしていた。
草の匂い、風の向き、空の低さ。
吉は越えたはずなのに、
気づけばまたここに立っていた。
戻ったのではない。
同じ地点を、違う時間で
踏んでいるだけだった。
村は下に見えた。
近づけば拒まれ、
離れれば呼ばれる距離。
足を運ぶたび、
丘は少しだけ低くなり、
代わりに吉の体が重くなる。
名前を呼ばれた気がして振り向く。
だが誰もいない。
呼んだのは声ではなく、
繰り返した記憶そのものだった。
ここは帰路ではない。
越境した者が、意味を失うまで
同じ動作を練習させられる場所なのだ。
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