奔別?/伊藤透雪
 
 日射しが強まり、ポタポタと雪が溶けて
ゆき、ようやく春がやってきた。
窓に打ち付けられた板を父が外したら、
部屋も目隠しを外したように、暖かい光が
入った。
土は肥料の臭いを纏い、
沢の音は大きくなった。

 唐松の茂る黒い山に、木蓮が白い斑点を
なし、熊笹が新芽を伸ばして青々と照り返
す。裏庭のラッパスイセンが黄色く咲いて
いて、里の家々でも咲いて、春が来たなあ
と空を見上げると、雲も光を反射している
ようだ。湿り気を帯びた空気が喉をひんや
りと通り、息を吹き返した山里も緑と花で
溢れていく。

 奔別小学校に植えられたヤマザクラの蕾
が膨らむ頃、入学式に父
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