映画『PERFECT DAYS』──あるいは安全な賭け/中田満帆
欠員、姪の登場、妹の登場、酒場での人間関係など、どれもが安全を脅かすようで肩透かしを喰らわしてしまう。そしてなにもなかったかのように、主人公はまた便所掃除の仕事へでかける。クラシック・ロックなどのカセットテープ、フィルムカメラ、文庫本というアイテムにはヴェンダースの物質への偏愛ぶりがうかがえたものの、そのどれもが浅堀りで、いまひとつ肝心な愛が伝わって来ない気がした。たとえば'84年作『パリ、テキサス』における電話や、テープレコーダー、トランシーバーのような物語の根幹にかかわる重要な小道具とい使われ方をしないということだ。たしかに平山の極度な無口ぶりや、他者との齟齬といったところはトラヴィ
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