ことしもこの国に冬がきた/岡部淳太郎
 
やはりどうしようもなく冬は来るから
仕方なく 誰もが冬の装いに着替えてゆく

その「仕方なく」の先を
女は探している
探しても やはりあの夏は
忘れられないから
女は自らの髪の栗色の輝きが褪せてゆくのに
耐えられなくなってくる

そして この弓なりの列島に
四つめの季節が巡ってきて
日が落ちるのが早くなり
同時に いのちか傾くのか早くなるのを女は感じている

なんとはなしに
女は墓地を歩き
そこから見える海の
輝きに少しだけ羨みを覚える

物事はすべて
いのちですらも仕方ないから
その道に沿って歩いてゆくしかない
女は諦めて すべてを
明らかにして
誰にともなくこの冬の慌ただしさをつぶやき
自らの存在が
幽かになってゆくのを
どうしようもなく
感じ始めている



(2025年11月)
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