スローイング婆と食パンをついばむバードたち/菊西 夕座
素浪人といえば古めかしいかもしれないが、素老婆(すろうば)はそんなことを気にするそぶりなど微塵もみせず、沼のほとりにサンダル履きでつかつかやってくると、柵越しに傾斜をへだてた水面にむかって、ほっそりした粗末な腕をちからいっぱい振りあげて、細かくひきちぎった絶縁状の残骸よろしく、きったならしいパン屑をこれでもかとばらまきはじめた。木柵の下には掃除機のホースみたいな首をのばした白鳥と、黄色いくちばしをしたプリケツのカモが群れをなし、競うように水面をせわしくすべりながら、青鈍色(あおにびいろ)の水にちらばった白い餌をついばみはじめた。二十羽ほどの迷える水鳥たちは、三方を雑木林にかこまれた沼で
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