詩は衰退したのではなく、移動した――日本詩歌ジャンルの制度と影響力/atsuchan69
 
 近年、日本の現代詩は「衰退した」「読まれなくなった」と繰り返し語られてきた。しかし本稿は、この通念に異議を唱える立場を取る。問題は詩的言語そのものの力の消失ではなく、詩が機能する社会的・制度的な場の移動にあるのではないか。

 日本において、短歌・俳句・現代詩は同じ「詩歌」という総称のもとに置かれながらも、それぞれ異なる制度的役割を担ってきた。短歌は国家的儀礼や文化的正統性の中心と結びつき、俳句は結社や師系を通じた集団的実践として広範な参加者を保持してきた。一方、現代詩は戦後の制度再編の中で定型から離れ、高度に専門化された表現領域として成立したが、その過程で社会的影響力を担う言語形式としての
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