隣のトロ/りつ
お大尽なのか驚いていると、
男は次々にトロを食べながら
「ここのトロは不味いねぇ、脂が全く乗ってない」
と文句を垂れ始めた。
それを聞きながら、私はどんどん怒りが込み上げて来た。
私だって、本音はトロを食べたいのだ。
なのに...なのに!
男が愉快そうに文句たらたらでパクパクとトロを口に放り込むのを見て、
私は静かに決断した。
「親爺さん、大トロ中トロ、100貫ください。
店のみんなに。私のおごりです」
男の不平不満に辟易してた客たちは、
拍手喝采した。
「味の分からん客に、ここのトロは勿体無いよ!
ここのトロは安いのにべらぼうに旨いんだ!」
そう。1貫、800円で、
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