濃緑のドア/佐々宝砂
今の状況を冷静に考えてみよう。LEDが明るい白壁の部屋。家具はない。窓もない。恐ろしいことにはドアもない。唯一の出入口は床にぽっかり開いた暗い穴だ。穴から半身乗り出している人は、あれは人なのだろうか、人だとすれば私がまるで知らないタイプだ。全身水色の人など私は見たことがない。
水色の人は穴から這い出た。人間ならよっこらしょとか言うのだと思うが何も言わない。全身水色なだけでなく光り輝いているので服を着ているかどうかも定かではない。ヒトのかたちをしているのは確かで、ヒトのかたちをした指で私を指し、自分を指差し、次いで、何もない白壁を指差す。私は頷く。
水色の人は壁を指した指を下ろさず、優雅
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