赤信号のあいだ/花野誉
 
赤信号
ここの信号は
変わるまで長い

運転席から見やる舗道は
眩しいくらい明るい

紅葉した連なる木々が
夕日に照らされて輝く

ひらひら 
赤、黄、茶の葉が
人々の上を舞う
暖かな光に
柔らかく染まる人たち

ふと、思い出す
あの人からもらった
二枚の写真

赤黄茶の絨毯みたいな舗道
指先で摘んだ銀杏の葉

ロマンチックで
大胆で
少し残酷で

外国に長くいた人は
こうなるのか、と
勝手に思った

そして冬が苦手で

「よく、しもやけになるから」

秋に出逢って
冬の終わりに別れた人

「今、大きな犬とオーストラリアにいます」
一昨年のお便りでは、確か

紅葉が連れてきた
おぼろげな人
不思議に
あの写真だけが
色鮮やかな記憶

目的地までの束の間

赤信号
短い光の間の追想







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