二度童子の魂を運ぶ白鳥の話/板谷みきょう
「……来てくださったのですね。」
おばあさんがそっと手を伸ばすと、白鳥の羽は夜風のように軽くなり、
触れた瞬間に、重さという重さがほどけていくのでした。
魂は、静かな光の方へとふわりと浮かび上がります。
白鳥は夜空へ舞い上がり、七つの星のひしゃくを渡るように飛んでいきました。
ひとたび羽ばたくごとに、銀の光があたりをやさしく照らし、
村の屋根を淡い揺らぎで包みました。
それは涙の河を渡る魂に寄り添う、静かな道しるべのようでした。
村の人々は音もなく空を見上げ、子どもたちは胸に手を当てました。
夜の深みに吸い込まれる光の軌跡を、祈るように追い続け
[次のページ]
[グループ]
戻る 編 削 Point(2)