二度童子の魂を運ぶ白鳥の話/板谷みきょう
は昔、ひとつの光がこぼれるような時間でした。
けれど今は、話の輪郭が水面の木の葉のように揺れ、
子どもたちはときどき首をかしげます。
「ねえ、おばあちゃん。今日のお話は、どこに行ったの?」
幼い声に、おばあさんは微笑みました。
「さあねぇ、虹の向こうへ飛んでったのかも知れんのよ」
子どもたちはその答えに戸惑いながらも、冷えた手をそっと握りました。
その手にはまだ、遠い昔の子守歌のあたたかさが微かに残っているようでした。
雨上がりの夕暮れ。
洗われた空に、七色の橋がふいに現れました。
「見て、空に橋ができたよ!」
子どもたちの澄んだ声が村にひろがり
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