久しぶりの日記/由比良 倖
 

 人は、、、何故生きるのだろう? 心細さと儚さ、懐かしさと悲しさ、そういうものの為に、僕は生きている気がする。それらは全て、プラスかマイナスで言えばマイナスの感情で、もし心に深い底の方があるとするなら、空が青いとか、空気が澄んでるとか、笑顔が美しいとか、海は広いとか、そんなことじゃなくて、暗い朝焼けに錆びた歩道橋とか、哀しい気持ちで飲み込む錠剤とか、歳を取ると個人と個人の境目が段々無くなっていくこととか、排水パイプの下に咲く光の花とか、記憶の彼方でひび割れた青い水槽とか、笑うつもりで下がってしまう口角とか、もはや戻ってこないものを惜しむ代わりに、全ては虹の音楽に溶け込んで、いずれは消えてしまう
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