幕を下ろす/
本田憲嵩
下ろしかけていた自動シャッターのボタンをまた上げる方に押す。シロップ漬けのサクランボのような紅色をしたまあるい巨星。とても大きく膨らんだ夕日がシャッター先のひくい夕空に浮かんでいる。しばしのあいだ魅入っている。いつだってものごとの始まりと終わりはとりわけ格別なもの。「ごきげんよう、また朝日(あした)」。上まで上げきっていた自動シャッターのボタンをまた下げる方に押す。シャッターを下ろして今日という日の勤務の幕を下ろす。
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