絆される夜/花野誉
 

「もう、寝てしまうん?」

酔った頭の横で 
やさしく囁く声がする

──その声が好きなんだな

突っ伏したまま
好い心地で聞いている

時折ぐるぐる回るので
それを止める為に目を瞑っている

「もう寝るん?」

わかってる
その言葉の意味は よく分かっている

でも今夜は飲み過ぎた
そして
ここに君といるのは 
ほんとうは おかしいことでして

「脱線中やから、これは」

それだけ言ったら

「かまへんよ」

セピア色の灯りが優しくて
心も柔くほだされて

それがまさかの一等いちばんの恋





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