思念の行方/積 緋露雪00
 
と)は「無垢」と呼ぶのかも知れませんが、
此の世界は無垢であることを存在に許さないのが道理で、
無垢なことはそれたけで悪なのです。

それならば赤子はそもそも無垢ではないかと言ふ半畳が聞こえてきますが、
そんなことはないのであります。
赤子とて此の世界に存在する以上、無垢である筈はなく、
生き延びる戦略として赤子は大人よりも相対的に無垢なだけであって、
赤子の無垢な事は、それはそれは余りにも知略戦略を凝らしたもので
羊水の中に漂ふ悦楽を知ってゐる赤子が無垢な筈がないのであります。
その証左に赤子は泣いて生れてくるではありませんか。
それは羊水での居心地の良さを知り尽くしてゐる
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