思念の行方/積 緋露雪00
 
溝川(どぶがは)の底のヘドロから鬱勃と湧き上がるメタンガスの気泡が水面でぽっぽっと破裂する音のやうに
思念は私といふ名のヘドロから鬱勃と湧くメタンガスの気泡であって、
思念は五蘊場で幽かな音を発しながら、
然もなくば幽かな光を発しながら私を呑み込むものなのです。

もしも思念が私を呑み込んでゐないと言へる現存在がゐるとするならば、
それはその現存在が己を知らぬばかりか、己が白痴といふ事を認めてゐる証左でしかないのです。
それといふのも、思念は無辺際に膨脹するもので、
それを成し遂げてゐない現存在は、まだまだ未熟で私を知らぬ赤子にも劣る馬鹿なほどの存在なのです。
それを他人(ひと)
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