無花果/栗栖真理亜
黄緑色の葉を広げ照りつける日差しに
まるで大きな掌のように翳す無花果
葉脈が透けて見える
去年は実ることなく
秋にはさっぱり綺麗に葉を散らし
今年はミニチュアサイズの
赤紫色の可愛い実を摘む暇さえ与えず
黄土色の丸い植木鉢の縁をバウンドさせて
コンクリートの白くて硬い地面へと落とした
掌に転がせばやけに軽く黒ずんで
萎みかけの風船のように皺くちゃになった皮は
カサカサと無念に鳴り
期待感は乾いた実のなかへ潜り込んでしまった
来年こそ実れよと思いを込めて
ジョウロで懸命に水をやる
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