詩の本/道草次郎
こんな田舎の図書館じゃ
理論社の水内喜久雄さんが撰んだ
有名詩人の詩の本しかない
わたしはそれを借りる
もう何回借りたか分からない
それを
たぶん
わたし一人が借りているので
その本は
あんまり擦り切れたりはしないんだ
川?洋さん
茨木のり子さん
山之口貘さん…
そして
谷川俊太郎さん
どれもたいへん短い
本だ
ぼんやりした絵が付いていて
優しそうな
雰囲気の
ふと
わたし一人しか借りていない
というのは
傲慢だと思う
こんな田舎にも
何故か
度々図書館へ来ては
そこにあるだけの
詩の本を
借りて帰る人もいるだろう
わたしは
その人と会ってみたい
気がする
希望とは
たぶん
このようなものに違いないと
ふいに
確信して
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