イーストビレッジの夜明け/歌留多カタリ
れたバナナの山を
奪いあう村人たちを尻目に
今夜こそ脱出を決行するのだと
粋がってたくせに
本当は素晴らしい虹と星とが同時に空を飾る
そんな夜明けなんかどこにもないってことを
知っている
互いのかたくなな思想をときほぐす船が
船着き場を離れ
朝食の残飯とともにこの世界が終わる日の
新しい朝のために甲板でカビ臭いパンを焼く
明け星が焦げすぎたパンの耳をかすめて
落ちてくる
梅雨時の女のくしゃみみたいに
イーストビレッジの固有名詞は
どこにでもカビのように生えていて
約束された社会の飾り窓から
見えている世界の全てがイカサマなのだと
季節は冬に向かい
もは
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