ポの近郊/尾内甲太郎
 
月がパリリと鳴る夜の
自動販売機から
飛び出るサイダー缶
魚の口をとめどなく
漏れるファミリマートの入店音

月がピリリと冷える夜
フライドポテトが揚げあがる
バイクの音は羽まみれ
峠の風をひきつれて
港のさきへ押しよせる

月がプルルと震えれば
ポケット 海へつながって
旧千円の宇宙人
液晶画面はあおじろく
あしたの月を映し出す

月がペルルミュテール
渚のストリートピアノ
星屑の香りをともなえば
鍵盤列のすきまより
灰色の鍵うきあがる

月はポなんて知らなくて
遠く 新幹線の通過音
ロードサイドの交差点へ
野菜の音階つみあがる
豚のはらわた踊るまで
戻る   Point(1)