打弦幻聴録/
ただのみきや
にを
得る度になにを失くしたのか
わたしはわたしを得るために
わたしの半身を失った
わたしは思いのほか他者で
他者たちは思いのほかわたしなのだ
雲の極りにも気を留めず
女神の裁ち鋏で
花でも活けるよう
みずからを割礼し続けた
騒がしい死者として
像を失くし
記号へ解かれ
愛に飢え
物乞いのたましいとして
ほおづき色に染まり
吐瀉物のように避けられながら
あなたの膝を探している
(2025年10月12日)
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