ひらひら/guest
 
釣鐘草の咲く
月面に
あなたの遺した手紙の
波紋が浮かぶ
月から見た空の色を
青だと言って
あなたは眠り
地球の言葉の寝言を呟く
夢から覚めた後
オレンジジュースを飲んで
食パンを一枚食べ
ゆっくりと手帳の頁をたぐり
そこにあった
蛾の死体が
自分の書いた文字なのだと
解るまでの五年間
確かに孤独だった
何処にも存在しないし
影がひしゃげて
記憶を思い出さなかった
空の色について
私が遺した説話を
玉虫の羽に重ね
そっと朱に透かす時
戦火が及ぶ町に向けて
もう何も見えない
と伝える
それが善意だった
スーパーで買った
センスのないスイーツ
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