金木犀/青の群れ
風に運ばれるその甘さは
孤独な夜をやわらげる
螺旋を描く階段を
昇ってくる気配のようで
街のざわめきは遠くに沈んで
ここでは沈黙を守ることが
唯一の祈りのかたちになる
煙草の灰が静かに落ちて
時間の針の音が響き渡る
これは愛だ、どこまでも
そう思える瞬間は
いつだって儚く
たわいもない
暇つぶしのように
金木犀の花びらの粒が
足元を染めるたび
そこにだけ残る香りが
孤独を塗り替えた
夜はまだ長い螺旋の途中で
立ち止まったまま
満ちる、息が、香りが
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