今はむかし/由比良 倖
1
今は昔の出来事です。過去の影から送られてきた命の種が発芽するまで、ここは私の居場所じゃない。出来事なんて本当は起こらない。ばしばし叩くエンターキー、私の指の骨、ネズミの日、音楽なんて巨大な内部の記憶装置で、いつでも私は映画みたいに、綺麗に演技してるみたいに、とろとろと、熱く泣けるし時々は笑えます。
2
反応、半透明のガラス、
自動パイプラインをいくつも通っていじらしくも赤いドーナツが届く。
壁に空いた引き出しからドーナツを取り出して今日の私の生命を祝う。
殺された記憶、死者が読み上げる何億枚にも渡るメモ、メモ、それが私、分裂した、
[透明な悪夢]のモード、記憶、影、異次元の葉
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