全行引用による自伝詩。 02/田中宏輔2
 

オーデンいわく、「詩は実際の効用をもたらすものにあらず」。
(ジュリアン・バーンズ『フロベールの鸚鵡』10、斎藤昌三訳)

 そして若いころ書いたわたしの詩一篇だ。この詩はとるに足らないもので、いまのわたしとしてはできれば破って棄ててしまいたい代物だ。
(ノサック『ドロテーア』神品芳夫訳)

 それが印刷されたとき、どんなに得意であったかは、今でもよくおぼえている。これでみんな、おれが詩人だということを知るだろうと、あの当時は思ったものだ。
(ノサック『ドロテーア』神品芳夫訳)

 世間の普通の人は詩など読まないものと、わたしは思いこんでいた。雑誌を見ていて詩が出てくると、人
[次のページ]
戻る   Point(11)