全行引用による自伝詩。 02/田中宏輔2
 
憶、知覚されるものと記憶されるものへの感受性、それらのほぼ無限の組みあわせにこそある。
(ダン・シモンズ『ハイペリオン』上巻・詩人の物語、酒井昭伸訳)

 右半球であつかえるたった九語の語彙だけで、どうやって立派な詩が作れるのかと、不思議に思うかね?
 答えはこうさ。小生は一語も言葉を使わなかったのだよ。詩にとって、言葉とは二義的なものにすぎない。なによりたいせつな対象は真実だ。ゆえに小生は、強力な概念、直喩、関係を用いて、物自体(デイング・アン・ズイツヒ)──影のなかにひそむ実体をあつかった。たとえていえば、ガラスやプラスティックやクロムアルミニウムすら出現しないうちから、より高度
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