全行引用による自伝詩。 02/田中宏輔2
りわからなかった。一冊の本が次の本につながっていくような一貫した読書方針もなく、よく、二冊、三冊を並行して読んでいた。次の段階になると、読みながらメモをとるようになり、それ以降はつねに鉛筆片手に読書をした。メモといっても読んだ内容を要約するのではなく、印象に残った一節をただ書き写すだけだった。メモをとりながらの読書を一年かそこら続けてからようやく、時おりためらいがちに自分の考えを書きとめるようになった。「私には文学が広大無辺な国のように思える。そのはるかな辺境へ向かって旅しているけれど、とうていたどり着けない。始めるのが遅すぎた。遅れを取り戻すのは不可能だ」と女王は書いた。それから(それとは無関係
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