百を足りて伏しやまず/菊西 夕座
たちの激しい奪い合いが楽を奏でる
足元からかすかに湧きおこる狂騒の音は 彼女の高貴な命がひとつ失われた葬送曲
その調べもまたふかく甘美な憂愁となり 彼女の頭にまでたちこめて心をまどわす
笑いからさめて身を起こしききいる姫君 その満ちた恍惚がまた漆黒の条(すじ)を落とす
ゲジゲイジュの美はそのようにして老い しだいに頭皮もそげて綺麗な髑髏となる
それでも麗しい毛髪で補強された百足が 思い出ぶかい楽曲を奏でつつ這い上がり
彼女の頭に漆黒の弦で編んだ王冠を被せ 走りまわる狂騒で永久に不死て止まない
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