メイクアップ /リリー
 
 汗で化粧が剥げてしまうから
 簡単に済ませていた夏
 だから秋は丁寧にメイクする

 朝の気怠さで
 まだ曖昧な輪郭の私は
 鏡に映る私という存在と
 ゆっくり呼吸を合わせていく

 この静かで少し緊張する時間
 いつもと変わらない顔に
 (さあ、今日も一日!)と
 ヤル気をこめる
 美人でなくてもそれだけで
 年齢相応にきれいになれる

 いつも物語から
 ぬけだすことのできない顔
 涙のシミ痕やしわくちゃになった
 ページもあるだろう
 それらの滲みでる顔も
 そこそこ退屈しない展開で
 生かされていく
 ストーリーの運びがメイクかもしれない

 決して白紙にはなれない
 自分の笑顔に
 化粧せず自信が持てる
 そんな女性の魅力は、いかにも尊い
 

戻る   Point(13)