水羊羹/たもつ
 


頬杖をついて
窓から夏が終わる頃の風
リモコンが息絶えた
まだ若かったのに
もうチャンネルを
変えることもなくなった
言葉にすれば
命は軽くなる
そんなことばかり

いただいた水羊羹が
消費期限を過ぎて
冷蔵庫で冷えている
ふとした拍子に
その行く末が
心配になるけれど
そのような時はいつも
冷蔵庫からも
心臓からも遠い

透明な選挙カーが
透明な候補者を乗せて
目抜き通りを走る
連呼する名前は
さよなら
誰にも届くことなく
夏の夕暮れは
水羊羹の中へと
滑り落ちていく


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