あぱつ/にゃんしー
実家に帰ったとき
姪っ子が歌いながら近づいてきて
「おじさん『あーぱつあぱつ』って知ってる?」
と上から目線で尋ねてきた
私はおじさんではない
「もちろん知ってるよ」
とくいげに答え麦茶を飲み干した
綾羽高校のショートが名守備を見せた
セミがじょんがら鳴いていた
あ…あべくん
ぱつ…ぱんつ
あぱつ…あべくんのぱんつ
もう40年も前になるのだ
いまほど暑くはない夏だった
水泳の授業にわくわくしていると
塩素の匂いを漂わせた先生がたしなめるように
「パンツに名前を書きなさい」と訓えてきた
着替えるときにパンツを失くすのはよくあることだったので
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