LIVING IN THE MATERIAL WORLD。/田中宏輔
 
の遺品のなかから見つけたことによるものであった。父は、40人ほどの人間を、ほどのというのは、正確な人数がいまだに確定されていないからであるが、殺害して食べたという人物で、その罪によって死刑になるまで、膨大な量の口述日記を


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書籍にして出版させていたからである。秘密などなかった。つまり、わたしが見つけた父の日記は、犯罪が発覚するまえのもので、ひとに話して聞かせた自伝とはまったく別の存在であったということである。父の日記は、楽園ではじめて目がさめたときの記述からはじまっていた。


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父は目をさますと、さいしょに神の顔を見たらしい。つぎに目をさますと
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