おれの徒然〈34〉「敗戦記念日」篇/中田満帆
に過ぎない。ひとつの口実によって無知な群衆を一網打尽にする目論見だ。戦争は神話の時代を再現するための、現代的な舞台だ。母なる邦、父なる神、そして列強という名の鬼のいる舞台だ。演出家は世界金融、観客は資本家とメディア、そして未来の子供たち。おれたちはけっきょく手のひらで転がされただけだ。歴史家の手のひらによって。
あるいはこういっても善い。神殺しをしなかったわれわれの上の世代の人間はみんな愚かだったと。裕仁天皇の意思や、実際の指揮系統がどうであれ、かれを神の座から降ろしてゆくだけの主体性がわれわれの国にはなかった。だからいまも戦争責任と無縁なところで『皇室ファミリー』などといっておちゃらけていら
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)