This Night/リリー
 
 心の跳ねとぶような白に
 目を見張る
 おおよそ神秘な所で
 香り咲いた月下美人
 
 一夜、月の輝きのなかへ
 身をなげだし
 実もつけない花の
 湧きあがる純白は何故
 そんなにいそぎ
 どこへ行くのでしょう
 もう 萎れてしまう朝に

 純真さが迫る
 希望も絶望もなく
 無量の香りの重みは呼吸の度
 しみいってきて 
 永遠がつめたい影をおとしていく

 今を生きるむずかしさ
 只わたし
 良い人でもなく悪い人でもなく
 老女となり死する生命あることの
 逃げ場のない餓えも
 みにくさも感じるのです

 だからこそ
 一夜、無心に咲き切る花のように
 もっとも単純な心で
 憧れを持ちたい
 

 
 

 

 
 
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