夜間飛行・夏/塔野夏子
 
月がゆれる
     星がゆれる

短夜の
   せつなくゆれる
          まにまに

あらゆる意味を
       ほどいてゆく
             溶かしてゆく

一人称も
    二人称も

溶かし去った
      そのあとに

流れ込んでくる
       銀河

ぬば玉の闇に
      無数の銀の雫

身を浸すままに
       漂う
         何処までも

短夜の
   せつなくゆれる
          まにまに

月はゆれて
     星はゆれて

それは宙で
     身のうちで

遠く聞く
    言葉のない
         かすかな歌声

甘やかななつかしさと
          はるかなあこがれと

無数の銀の雫
      滴るまにまに

震えながら
     たなびく
         短夜の
            明ける果てまで


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