タクラマカン砂漠の風/りつ
 
ごうごうと
熱風が吹き抜け
砂を舞いあげる

ひょうひょうと
風と共に砂が流れ
熱い想いを連れてくる

原始
最初のおとこは
最初のおんなを
どれほど熱烈に愛したのだろう
情熱の全てを
痛いほどに滾らせて
どんなに熾烈に抱いたのだろう
おんなは脳髄が蕩けそうになって
強かな絶叫を放ったのだろうか
風の向こうに

二千年前のミルラの花束
既に枯れているが
仄かに思い出の匂いがする
それは恋人が贈った商人のお守りだったかもしれない
キャラバンが砂嵐にあった時
風が拐ってしまったのかもしれない
小さな花束は
ひとの営みが永々と続くことを物語っていた

砂も空も風も
何も語ろうとしない

ただ
かつての記憶は
あめつちに溶けて
風に甦る

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