青いプールと少女Q/みぎめ ひだりめ
 
かに 見出さざるを得ないらしい

僕は冷たく さらっとした手を引いて
プールの淵を 覗き込んでいた
黒くてゆるやかな波が 星と泳いでいる
偶に月光を吸い込んで 青色を宿すさまは
冬まで生き延びた 雌鹿の瞳のようだ
ちょうど少女Qのような
少し畏ろしいけど 綺麗な目だと思った

少女Qは 帰り道を探していたらしい
どこに帰るの と聞けば
寂しくない場所に決まっている と言う
少女Qは 僕を見て笑っていた
僕もなんだかおかしくて 笑った

少女Qは水のなかに足を沈めながら
うつむいていた
彼女の肌は なぜか濡れていない
少女Qは言った
「ここまでさ、全部嘘だって言ったら」
「あなたは嫌いになっちゃうかな」
彼女の目には宇宙が宿っていた

少女Qはもう いなくなっていた
きっと その
寂しくない場所とやらに行ったんだろう
気がつけば 辺りは明るくなっていた
そろそろ巡回の天使が降りて来る
僕はふと 少女Qが沈んだ プールの淵を見た
ぷかぷかと そこには 
捨てられた ペットボトルが一つ浮かんでいた
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