蟷螂 。/田中宏輔
 
なかなか死ななかった。バラバラにしてやっても、しぶとく動いていた。ぼくは、そいつがカマキリのほんとうの正体か、それとも、もうひとつ別の姿か、あるいは、もうひとつ別の命のようなものだと思っていた。そいつがハリガネ虫とかと呼ば
れる、カマキリとはぜんぜん別個の生き物であるということを知ったのは、中学校に入ってからのことだった。そいつは、カマキリのお腹のなかに棲みつきながら、カマキリの躯を内側から蝕んでいくというのだ。そのことを知って、カマキリを殺すことがつまらなくなってしまった。そしたら、とたんに、カマキリの姿を目にしなくなった。見かけることがなくなったのである。不思議なものだ。それまで、あんなによ
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