詩の博物館/ハァモニィベル
 
ろがず窓に倚(よ)つてゐることがある。
いかにも脆さうなその翅の美しさで、貼りつけられた蝶のやうに。
夢みる少年が、ぼんやりと靠(もた)れてゐることもある。漠とした倦怠に沈んだ、
彼の上衣を汚してゐるのは、過ぎてゆく時間だ。
遂に彼らが風となり、水となつて川に注がれてしまふ日までの……〈辰雄〉



赤い明るい西の空も
灰色にむしばまれる
そしてくろくなって
やがてダイヤモンドに灯りがつく
よく生きてきたと思う よく生かしてくれたと思う 〈浩三〉



こんなに厚い葉 こんなに大きい葉でも
新しい葉が出来ると無造作に落ちる 新しい葉にいのちを譲つて――
[次のページ]
戻る   Point(3)