目ざめる前に/唐草フウ
知らないところでさり気なく
「うちの妻が」と言ってもらいたい
時代に逆行しても
「思い出に残る熱い先生でした」と卒業式の寄せ書き
オルガンをうまく弾けなくても
「あの子守歌、背中がここちよかったよ」と
いつかほろっと零してほしい
くだらないことで涙しながら
パートナーとくだらないいとしさを言いたい
ケロイドのない身体で
可愛いビキニを着てみたい
披露宴のフィナーレで
生まれた重さのぬいぐるみをもらいたい
「ゆめ」とタイピングしようとしたら
「爪」になってしまった
すべてはどこかのフードコートみたいにかけらだけが散らばり
喧騒と人ごみがとおりぬけ 慣れる
心から好きな人に
心から大切だと思われたい
青い鳥を探そうと見上げたら
青い空だらけだった
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