羽虫 。/田中宏輔
 

真夜中、夜に目が覚めた。
凄々まじい羽音に起こされた。
はらっても、はらっても
黒い小さな塊が、音を立てて
いくつも、いくつも纏わりついてきた。
そういえば、ここ、二、三日というもの
やけに、羽虫に纏わりつかれることが多かった。
きのうは、喫茶店で、口がストローに触れた瞬間に
花鉢からグラスのなかへ、羽虫が一匹、飛び込んできた。
今朝などは、起き上がってみると
シーツの上に、無数の黒い染みが張りついていたのだ。
と、そうだ、思い出した。
ぼくは思い出した。
ぼくは、とうに死んでいたんだ。
おとといの朝だった。
目が覚めたら、ぼくは死ん
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